『あのこは貴族』書評
『あのこは貴族』山内まりこ
昨日子供が早く寝てくれたので1日で読み終えました。読みやすい本でした。
主人公や登場人物が若い女の子だと、比較的砕けた日本語の文面になる印象でしたが、
本書は丁寧に描写も書かれており、文章の勉強にもなりました。
では、ここから書評です。
主人公2人の共通点は狭いコミュニティで生きてきたこと
環境は違えど、狭い人間関係で生きてきたという共通点がありました。
お金持ちの東京生まれ東京育ちのお嬢様と田舎出身で努力して有名大学に入学した苦労人。
やっと入学して、自分も選ばれた人間になれるのかと思いきや、大学受験で入学した自分たちは外部生と呼ばれ、幼稚舎上がりの学生達とは見えない分厚い壁があったのです。
狭いコミュニティで育つと、価値観が偏る
お金持ちがいい、東京育ちがいいなどという話ではなく、どんな環境でもずっと同じ地域で、同じ人付き合いをしていては、偏った価値観が植え付けられ、さらにそれが普通であるという錯覚に陥ってしまいます。自分と同じような人種でなければ認めなくなり排他的になったり、逆に他の人種に強い憧れを持ち、アイデンティティを忘れてしまうということがあります。
特に、狭い島国の日本ではよくあることで、地方や特権階級などの他者が入りづらいエリアではその傾向が顕著に現れるのだと感じます。
あなたの価値観は、本当にあなたが生み出した価値観なのか
偏ってしまった価値観が、環境によってもたらされたものだと気づけなければ、それが自分の意思であると錯覚してしまうことがあります。
これは自覚することが本当に難しいと感じます。
- 東京生まれ東京育ちの人は気取っていてプライドが高い
- 高いブランドの洋服を持っていればオシャレになれる
- 大きな企業に就職することが幸せ
- 友達は多い方が幸せ
- 大きなお家に住むことが幸せ
など、挙げたらたくさんなると思います。
これらは、実体験に基づいた経験則ですか?
違うと思います。無意識に抱いている憧れや、コンプレックスまた、環境によってもたらされたものである可能性が高いです。
例えば、親や友人が気づかせてくれればいいのですが、同じような人間であればそれは難しいでしょう。
本書では、同族嫌悪をきっかけとして主人公の1人が気づきを得ます。
もう1人の主人公は自分の憧れの存在の小ささに気づくことによって価値観を壊すということができます。
あなた自身の価値観で人生を歩まなくては本当の幸せは得られない
人に植え付けられた価値観で人生を歩んでも、幸せになれないということを主人公は体現してくれます。自分と同じ東京生まれ東京育ちのお金持ちと結婚し、専業主婦になることが幸せだと信じて結婚したけれど、そこに幸せはなかった。
もちろんその環境で幸せになれる人もいるでしょう。
ただ主人公は、それが本人の幸せではなかったという話です。
自分自身の価値観を見つけるためには
私自身できていることではないので、偉そうなことは語れません。
- 女だって仕事をしないと幸せになれない
- 主婦でも自分でお金を稼いだ方がいい
この本を読んでいる限りは、狭いコミュニティをでて、いろんな人種と出会い付き合い、多様な価値観を取りれることで、視野が広がり、ゆくゆく自分の価値観と出会うことができるようです。
現に主人公華子の友人である相楽は、花子と同じ育ちではありますが、ドイツに音楽留学し、外国人とばかり付き合ってきた人。結婚が女の幸せと決めつける友人達へ毒を吐くシーンも印象的です。最後華子を救うのもこの相楽です。
価値観と幸せは人それぞれ 押し付けることはしない
自分の経験から編み出した価値観も、自分にとっては正しくても、相手に当てはまるとは限りません。
例えば、子供を2人産んで兄弟がいるといいなと思う経験をしても、子供は1人でいいと思っている人に2人育児した方がいいとアドバイスすることは、相手を不快にさせるだけでなく傷つけてしまうことになりません。誰もがやってしまいがちですが、傲慢で自分勝手な行為です。
相手が悩んでいたら、相手の価値観を理解することが必要です。
壁にぶつかったら、自分の価値観を否定してみる
壁にぶつかったり、家族や大切な友達と分かり合えなかったら、おそらく価値観が噛み合わないことが原因。
譲れない価値観も確かにあるはずです。でも、価値観の不一致で離婚するのであれば、やっぱり狭いコミュニティの人とお結婚した方がいいのでは、という結論になってしまいます。
異なる価値観の親から育てられた子供は、既に多様な価値観を持つことができるというメリットがあります。
夫婦が理解し合うためには、個人の価値観と、夫婦としての価値観両方をもつことを許容することではないでしょうか。
家族みんなが幸せになるための新しい価値観を夫婦で作り出すのです。
簡単なことではないですが、1、2年のスパンではなく、20年30年のスパンでならできるかもしれません。
明日からできること
- 共感できる話以外の本や映画を観てみる
本や映画は他人の人生を手軽に体験できるもの。いろんな人生を経験して見聞を広められます。
- 話をしたことがないクラスメイトや仕事仲間と雑談してみる
話しやすい人は自分と似ている人。なかなか声をかけられなかった人と関わるだけで世界が広がるかも
- YESマンになってみる
まずは1度、相手の意見を受け入れてみる。それから別の意見を言っても遅くはないはず。